当協議会は、国に対し、貸金業者、貸金業者から委託を受けた者、貸金業者の貸金債権を譲り受けた者による、消滅時効期間が経過した債権の請求について、これを規制する方策を講じるよう求める。
1 問題の所在
近時、貸金業者、貸金業者から委託を受けた者、貸金債権を譲り受けた者から、消滅時効期間が経過した債務の支払いを求められ、債務者が時効制度を知らずに弁済を強いられる事案が多発している。この中には、債権管理回収業に関する特別措置法第2条第3項の債権回収会社によるものも含まれている。
こうした事案のほとんどは、生活苦等のために貸金業者から借り入れをし、その後返済に窮し、延滞が長期にわたった結果である。
たまたま法律の専門家の助言を受けることができれば時効を援用できるが、そうでない債務者は、時効制度を知らないまま、突然の請求に直面して多額の支払いを余儀なくされ、たちまち生活が破綻することになる。
時効の援用は、時効の利益を受けることを潔しとしない債務者のために、あえて支払いをする選択肢を与えるためのものである。貸金業者等から時効債権の取り立てを受ける債務者は、押しなべて生活に困窮しており、払えるのに払わなかったという例は皆無に近いと考えられる。このような債務者はあえて時効の利益を放棄するわけではなく、時効という制度を知らないために時効援用権を喪失しているだけである。
債権者は、時効債権を安価で買い集めるなどし、多額の遅延損害金を加算して債務者に請求し、たまたま時効の援用がないのをよいことに利益を獲得している。
結局のところ、時効債権の取り立ては、債務者の法的知識の不足に乗じて利益を上げるビジネスモデルに他ならない。
2 規制の必要性
時効債権の請求は、債務者の生活を一瞬にして窮地に陥れる結果を招く。早急に規制の方策を講じる必要がある。
そもそも、貸金業者は、時効完成前に時効更新の手段をとることが可能である。貸金業者自身も回収困難と判断し時効更新の措置を取らなかったがゆえに、時効期間が経過するのである。
みずからとるべき手段を講じずに放置しておきながら、債務者が時効制度を知らないのを良いことに手当たりしだいに請求をしているというのが実態である。
法的知識がないだけの債務者の時効の利益を犠牲にして、こうした事業者の利益を保障する必要性は全くない。
時効援用権を喪失した債務者は、それが原因で破産しなければならなくなることも少なくない。そうなれば無駄な費用が発生す
るだけである。
消滅時効期間が経過した債権の取り立てに対する適切な規制は、「貸金業を営む者の業務の適正な運営の確保及び資金需要者等の利益の保護を図る」という貸金業法の目的に照らしても必要なことである。
3 規制の方法
租税債権は、援用がなくても時効期間の経過によって当然に消滅する。貸金業者の貸付金も、同様に、時効の援用を要しないものとすることは法制度上可能なはずである。
また、債務者が時効援用権を行使する機会を保障するために、時効援用権があることについて債務者に告知する義務を、貸金業者や貸金業者から委託を受け又は貸金業者の貸金債権を譲り受けた債権回収会社らに課すという制度を導入することも考えられる。特定商取引法などでは、購入者等にクーリングオフの権利があることの告知義務を、販売業者等に課していることが参考になる。
時効債権の請求に対しては、このような法改正で対応することが考えられる。
4 まとめ
消滅時効を援用するか否かによって、債務者の経済状態は大きく変わってしまう。法律知識がないことに乗じて、貸金業者が利益を上げることは正義に反する。
時効債権の取り立てが蔓延している現状は、かつて、利息制限法の存在を知らない大量の債務者が、支払う必要のない利息を支払わされていたことを想起させる。
よって、われわれは、国に対し、消滅時効期間が経過した債権の請求について、これを規制する方策を講じるよう求めるものである。
以上、決議する。
2025年1月11日
全国クレサラ・生活再建問題対策協議会