私たちは、1978年11月に全国サラ金問題対策協議会として発足し、多重債務問題の解決にとりくみ続け、2006年
の貸金業法改正によって、多くの多重債務者を生み出し苦しめ続けた高金利を是正する一定の成果を勝ち取った。
しかし、日本では、1990年代以降、構造改革の名のもとに、労働分野では規制緩和により低賃金・不安定就労の非正規雇用への置き換えが進められ、社会保障は医療・介護、年金、生活保護など幅広い分野で削減・自己負担増が進められてきた。税制は大企業や富裕層を優遇した減税政策が進められ財源調達能力が大きく低下し、財源不足を理由に社会保障が削減されるという悪循環に陥っている。新自由主義的な構造改革は、弱肉強食の社会を作り、強い者をより豊かにし、中流層を減少させ、低所得者層を増加させ、人々の連帯を破壊して分断と対立を深刻化させている。
こうした政策の問題点は、2008年のリーマン・ショック、2011年の東日本大震災・原発事故、2020年からのコロナ禍の惨状を経ても是正されないままである。のみならず、現政権も、国民的議論もないまま「防衛」予算の倍増を決定する中、社会保障がこれまで以上に削減される可能性が高まっている。新年早々、能登半島において深刻な地震被害が起き、被災者の避難生活が続いているが、今後も、新たな感染症、巨大地震、気候変動に伴う災害などの到来は避け難く、社会の危機は深まるばかりである。
私たちは、この困難な状況にあって、もう一度原点に立ち戻る必要がある。
クレサラ運動の出発点は、相談現場に立ち、当事者・仲間とつながり、当事者の声を社会に伝え、地域の中で共に実践したことにある。地域における連帯・参加・協働があったからこそ、地域と地域がつながり、全国規模の運動となり、被害を可視化して社会に訴えることが可能となった。そして、30年に及ぶ粘り強い運動を続けたからこそ、大きな力となって社会を動かした。
コロナ禍では、感染が拡大する中、全国各地が連携して、なんでも電話相談会の取組が始まり、足掛け3年にわたり1万5000件以上の相談に対応した。2023年4月からは地域によって食料支援も含むリアル相談も交えた「いのちと暮らしを守る なんでも相談会」を4回にわたって実施し、うち3回の相談会だけでも2400件を超える相談が寄せられた。こうした取組が可能になったのは、クレサラ運動や派遣村の取組などから続く反貧困運動などの連携の基盤があったからこそだ。
相談会では、フリーランス、失業者、シングルマザー、高齢者、外国人など多様な人たちからの相談が相次ぎ、相談内容は、低賃金、解雇・雇い止め、失業給付の問題、低年金・無年金、奨学金・住宅ローン・特例貸付などの債務問題、住居の喪失、税金滞納による差押え、生活保護に対する忌避感や水際作戦、物価高騰で食事にも事欠く生活苦など多岐に及んでいる。 寄せられた人々の声は、豊かとも言われるこの国に、困難から抜け出せず絶望の淵にいる人がいかに多いかを伝えるとともに、貧困と格差を拡大させ人々を不幸に陥れる社会構造の問題が未解決のまま深刻化していることを可視化し私たちに教えてくれている。
私たちは、既に多重債務などの消費者問題だけでなく、生活保護、社会保障、住宅、非正規雇用、奨学金、税制などの幅広い諸課題に取り組んでいるが、こうした深刻な状況は、格差や貧困を根絶する観点から、こうした取組みの有機的な関連性をより強化することの重要性を示している。
そこで、私たちは、関連団体との連帯・連携をさらに深め、粘り強く続く運動の知恵や努力を、生活保障法制定運動などの次の具体的アクションへとつなげ、未来の希望に続く道を切り開くことを決意する。そして、地域から、当事者・仲間とつながり、連帯・参加・協働と学習を積み重ね、①相談対応などによる個別支援の現場に立ち、②生活苦や不安定就労などに苦しむ人の状況を社会に伝え、③取組を通じて地域内の連携を進化させ、地域の力を高めつつ、地域と地域が連携し、④これらにより労働や社会保障の制度改善を図り、格差と貧困を解決していくことに力を尽くす決意である。
2024年1月13日
全国クレサラ・生活再建問題対策協議会総会
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